シリア:国連による人道支援資金の削減がもたらす影響

2024年01月06日付 その他 - Al-Jazeera.net 紙

■シリア北部における国連支援の削減が人道組織および人々に与える影響とは?

【アルジャジーラ・ネット:シリア北部】

ザーヒル・ウバイドゥーさんは、10年以上にわたってシリア北西部で活動している人道組織内で公衆衛生の分野における新たな仕事の機会を探している。

ザーヒルさんはかつて同地域で活動する国際組織で働いていた。しかしシリア北部における国連食料計画(WFP)のプロジェクトが停止したことで、彼やそのほか100人以上の被雇用者が職を失った。

彼はアルジャジーラ・ネットによるインタビューのなかで、雇用機会が乏しく、シリア北部でのプロジェクトの中止によって人道組織が人員削減を行ったために、新たな仕事を得ることへの絶望と挫折感をあらわにした。

ザーヒルさんは、「一昼夜で、私の生活は天地がひっくり返った。かつては月末まで十分な500米ドルの給料を受け取り、シリア政府の手によって命を奪われた兄の家族を支援していた」と述べた。

「悪影響」

WFPが2024年中にシリア北部における支援を大幅に削減したことで、人道組織は数百人の職員を解雇することとなり、各家族は子息たちによる収入を失ってしまった。

さらに保健・衛生・教育の部門に直接的な影響を与える数十の人道プロジェクトも停止され、避難民への財政支援も半分以上削減された。また各人道組織は、毎月提供していた支援を2か月ごとに変更した。

この文脈で、国連人道問題調整事務所(OCHA)の情報筋がアルジャジーラ・ネットに伝えたところによると、同プログラムが人道組織への支援を停止したのは、資金の減少に起因するのだという。これまでWFPは、国連移住機関(IMO)から提供され、数万人の避難民に恩恵をもたらしていた教育や水のプロジェクトに加えて、毎月26万ものバスケットをシリア北西部に運搬していた。

同筋はさらに、キャラバン建設、衛生整備、ごみ収集のプロジェクト(すべて国連機関からの支援を受けたもの)が、新たな削減の影響を受けて停止し始めていると述べた。

同筋は、支援の削減および組織の撤退が続けば、同国北部の状況は壊滅的なものとなり、新年中に飢餓状態に陥る恐れがあると指摘した。

これに対して、「シリア対応コーディネーター」チームは、同国北西部における人道部門をカバーするための緊急要請アピールを開始した。

同チームは支援に対する各部門の必要性を以下のように評価した:

• 教育部門:2,400万米ドル
• 食料安全・生活部門:3,200万米ドル
• 保健・栄養部門:1,300万米ドル
• 避難所部門:3,200万米ドル
• 水・衛生部門:1,800万米ドル
• 保護部門:100万米ドル
• 非食料部門:900万米ドル

「壊滅的な状況」

同チームの情報筋はアルジャジーラ・ネットに対して、「人道的状況は壊滅的なものとなっている」と語り、またすべての人道組織や機関に対し、キャンプにいる避難民の冬期のニーズを全般的に確保するために、効果的な貢献を行うよう呼びかけた。

同筋はもっとも弱い立場に置かれている集団に必要なサービスを提供する活動を呼びかけ、各組織に対し、キャンプ内での過去の被害や下水道システムの修理、テント内の雨漏りを防ぐために必要な遮断板の確保、新旧のキャンプや集団全般における道路の舗装作業を促した。

同対応チームによれば、新年に入り、1か月に5人家族を養うのに十分な食料詰め合わせ箱の標準価格が約98米ドル(2,793トルコリラ)に上昇し、昨年10月から147リラの値上がりとなったという。この額は、インフレ率が前年比で75.04%増加したこともあり、日雇い労働者の1か月分の給与の67%に相当するようになった。

食糧難に苦しむキャンプの割合は88.7%まで上昇し、キャンプのうち95.1%がパンの確保に困難を抱えている。

同対応チームによれば、人道支援が必要な民間人の数は440万人に達しており、前年比で約11%増加した。さらにこの割合は、為替レートの変動、食料価格の高止まり、そのほかいくつかの物資の価格上昇などの要因により、今年末までに17.3%増加することが予測されている。

「膨大な資金不足」

一方ラアス・フスン地区在住のサーミル・スライマーンさんは、自身に提供される人道支援が半分に減少したことに不満をもらす。昨年は毎月104米ドル受け取っていたが、今月の受給額は65米ドルとなった。

スライマーンさんはアルジャジーラ・ネットに対して、アレッポ県とイドリブ県の田園地帯で活動する「アクテッド」によって、家庭が3つのグループに分けられ、1つ目は117米ドル、2つ目は104米ドル、そして3つ目は52米ドルを受け取っていたと語った。

彼は、今年に入ると同組織はその金額を減らし、第1グループには65米ドル、第2グループには33米ドルから55米ドル、第3グループには25米ドルを配給したと付言し、この額がどの家庭にとっても2日分に満たない額であると語った。

人道分野の活動家であるジャミール・サッルーム氏は、この新たな削減によって、人々は基本的な物資を得るために日々の食事の回数や食料の量を減らすことになり、これが「奈落の底、そしてシリアにおける人道的対応の資金調達における欠落の拡大に向けた新たな一歩である」説明した。

同氏は加えて、基本的な食事の回数を減らした家庭の割合が71.2%に達し、キャンプ内では93.8%に達したと述べた。

サッルーム氏は、冬期の対応活動への資金拠出に関して国連から何の発表もなく、人道的な対応活動に膨大な欠乏が生じていると指摘した。またこのことは、特に今年の冬、キャンプ内の市民や避難民全般に対して予想される壊滅的な結果を示していると述べた。

シリア北西部で活動する数十の地元または国際の人道組織が、国連による数十のプロジェクト、特にWFPのプロジェクトを停止したため、数百の家庭が唯一の生活収入を失い、失業率が上昇したことは注目に値する。


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翻訳者:浪内紫雲
記事ID:57109