モスクワのISテロ、犯行はトルコから入国のタジク国籍者?

2024年03月24日付 Milliyet 紙
イスタンブルのロシア領事館前
イスタンブルのロシア領事館前
ISISが犯行を主張しているモスクワのテロ攻撃で、余波が広がっている。プーチン大統領は襲撃犯を拘束したことを発表し、(24日を)追悼の日とすることを宣言した。襲撃犯のうち4人はウクライナ国境方面に逃走していたところを逮捕された。

ロシアのモスクワ州クラスノゴルスクにあるクロッカス・シティーホールで発生したテロ襲撃はISISが犯行を主張しており、その余波が広がっている。ロシア捜査委員会は、消火活動後に瓦礫撤去作業が始まると、さらに多くの遺体が見つかり、死者数が143人に増えたと発表。死因は「銃撃による傷」と「火災による中毒」と記録された。

一昨日、バンド「ピクニック」がコンサートを行った建物を武装集団が襲撃し自動小銃を発砲した。襲撃犯らは可燃性物質で建物に放火。その後、火災が発生し1万2900平方メートルが炎に覆われ、建物の屋根が崩壊した。

■11人拘束

テロ襲撃後には大捕り物が展開された。ロシア側は攻撃実行者4人を含む22人を拘束したと発表し、露ウラジーミル・プーチン大統領は、昨日、襲撃犯は全員捕らえられたと述べ、「我々の敵は我々を分断することはできない」と述べた。プーチン大統領は襲撃を「野蛮なテロ攻撃」と呼び、3月24日を追悼の一日とすることを宣言。同大統領は「このような犯罪の背後にいる者は何者だろうと特定され罰を受けることになる。テロリストを待つのは報復と忘却だけだ。彼らに未来はない」と述べた。

■「トルコから入国」

ロシア連邦保安局(FSB)は、襲撃犯らがウクライナ国境に向かって逃走中にブリャンスク地方で捕まったと発表。FSBは「テロリストは攻撃実行後、ロシアとウクライナの国境を越える計画を立てていた」とした。公開された襲撃犯らの映像からは、彼らが50万ルーブルの提供を受けたと話しているのが確認できる。襲撃犯の1人は3月10日にトルコからロシアに来たと述べている。犯人はタジク人とされており、逃走車からパスポートが発見されている。しかしながら公式発表はなされていない。

攻撃後、世界中からテロを非難するメッセージが届いた。特に欧州連合、NATOも含め西側諸国の指導者らが一斉にテロ攻撃を非難した。アンカラの大使館では半旗が掲げられた。

また、イスタンブルに暮らすロシア人らはロシア領事館前で犠牲者に花を供えた。

■ゼレンスキー大統領: いつも同じ手法

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、露プーチン大統領がモスクワでの攻撃にウクライナが関与しているものだと主張しようとしていると述べた。ゼレンスキー大統領は、ロシア側は以前も似たような試みを講じたとし、「彼らはいつも同じ手法を使う」と述べた。ゼレンスキー大統領は、ロシア軍はウクライナやウクライナ市民への「テロ行為」を行っていると非難。ウクライナ外務省も、「(ロシア側がおこなっている)罪のなすりつけ行為は、ロシア国民の反ウクライナヒステリーをさらに煽り、ロシア国民をさらに動員して、わが国に対する犯罪的侵略に参加させるための土壌を整えることになる。これは国際社会からウクライナの信用を失墜させるためにクレムリンが計画した挑発行為だと我々は考えている」と述べた。また、ロシアは今回のテロ攻撃をウクライナとの戦争と関連づけ、ウクライナへの攻撃を強める可能性があるとした。

■最大のコンサートホール

モスクワ近郊のクロッカス・シティーホールは、アゼルバイジャン出身の実業家アラス・アガラロフが所有しており、同氏はドナルド・トランプ元米大統領と緊密な関係にある。建物はモスクワ最大のコンサートホールとして知られ、トルコのアーティストではタルカンなどの有名人が出演している。

■バタクラン劇場のケースに類似

フランスの首都パリで2015年のISISの複数の襲撃と今回のモスクワでの襲撃には類似がみられる。パリでの襲撃ではバタクラン劇場で少なくとも100人が死亡し、他の6現場で少なくとも40人が死亡した。

■米が警告も露は耳を貸さず

米メディアは、今回の襲撃の2週間前に米政府が露側に警告したが、露側はこれを脅しであり脅迫だと受け止めたと報じた。CNNニュースによれば、米政府は、地域のISIS分子が攻撃を企てていることは明白であるという情報をモスクワ側に伝えた。しかしロシア政府はこの情報に反感を示した。ウラジーミル・プーチン大統領は、米国からの警告は「挑発的」であると受け止め、「社会を動揺させようとしている」と主張した。米国国家安全保障会議のエイドリアン・ワトソン報道官は、「通告義務」方針にもとづき、すべての情報がモスクワ政府と共有されたと発表。一方、露安全保障筋は『RIAノーボスチ』紙に、露は米国から、モスクワを標的とした攻撃がおこなわれる可能性に関する警告情報を受けたが、その情報には「詳細が含まれていなかった」と語った。

■ロシアはテロに試されてきた

今回のコンサートホールへのテロ攻撃では、ロシアで過去20年間に発生した襲撃事件のなかでも最も多くの血が流れた。しかし、ロシアはこれまで幾度も類似のテロ行為を目の当たりにしてきた。

1999年:モスクワのアパートが襲撃され合計293人が死亡。チェチェン分離主義者による犯行とされる攻撃が2週間続いた。この攻撃はモスクワ政府によるチェチェン戦争開始のきっかけとなった。

2002年:チェチェン分離主義者がモスクワのドゥブロフカ劇場を襲撃し800人を人質に取った。治安部隊によるガスを用いた介入がなされ130人が命を落とした。

2003年:チェチェン人自爆テロ犯がモスクワ近郊の空港で開催されていたコンサートを襲撃し15人を殺害した。

2004年:ダゲスタン出身の2人組自爆テロ犯がモスクワの地下鉄駅を攻撃。爆発で40人が死亡した。

2004年:チェチェン分離主義者がベスラン町の学校で子供777人を含む1100人以上を人質に取った。これを受けロシア治安部隊が介入。 衝突は3日間続き334人が死亡する結果となった。

2011年:モスクワのドモジェドヴォ空港で発生した襲撃で37人が死亡。コーカサス首長国(チェチェン分離独立はテロ組織)が犯行を行った。

■ISISはロシアに何を望んでいるのか?

(ISISの)組織は、特にアフガニスタン、チェチェン、シリアにロシアが介入したことに不満をもっている。ここに挙げた国々の状況が、ISISにロシアへの強い敵意を抱かせていることが知られる。近年、ロシアのプーチン大統領に対するISISの厳しい姿勢が注目されており、ISISはこうした問題を頻繁にプロパガンダに利用している。ISISはロシアのことを「その手にはイスラム教徒の血が塗られている」と非難している。ロシア側はウクライナ戦争があったことでISISの脅威を見過ごしたと言われている。ISISの報道部門であるAmaqが発表した声明では、今回のテロ攻撃は「ISISと反イスラム諸国との間で進行中の戦争の一環だ」と述べられている。

■ISISホラーサーン支部は旧ソ連地域で活動

モスクワでの血なまぐさいテロ攻撃を実行したISISホラーサーン支部は、今年1月にイスタンブルのサルイェルにある教会を襲撃し、1名が死亡した事件でも話題となった。ISISのイラク、シリア支部は崩壊したが、中央アジアからコーカサスに至る旧ソ連地域で活動しているISISのホラーサーン支部はその勢力を維持していると言われている。

同組織のメンバーは主にタジク系、アフガニスタン系、イラン系、ウズベキスタン系、チェチェン系、コーカサス系で構成され、メンバーはロシアのパスポートも所持している。国際報道機関は、ISISホラーサーン支部がサルイェルでの攻撃と同じくモスクワでの攻撃の犯行も主張したと、ISISのいわゆる報道部門である『Amaq』の発表を引用するかたちで報じた。

安全保障の専門家によれば、テロ組織はサルイェル事件の際も長銃身の銃器を用いた攻撃を実行しようとしていた。専門家らは、トルコ情報機関がISISの武器供給ルートを遮断したことで組織が目的を達成できなかったと強調している。


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翻訳者:原田星来
記事ID:57553