■国外発のネット工作がシリアの宗派主義を「扇動」:直近の事件を背景に
【本紙】
2025年4月下旬にダマスカス郊外県のジャルマーナー市とサフナーヤー町でぼっ発し、スワイダー県まで波及した衝突を受けて、ネット空間、特に「X」(旧ツイッター)では、宗派主義的な言説がかつてないほどに噴出した。
ネット上で繰り広げられる工作は、シリアにおける紛争の新たな側面を浮き彫りにした。そこではもはや、戦闘は戦場だけで行われるのではなく、意識やナラティブのレベルで繰り広げられるようになったのである。宗派主義的な言説が、このように組織的な方法で生み出され、増幅させられると、それらはネット空間に留まらず、現実世界に漏れ出す。そしてこうした言説は、戦争によって疲弊し、分断の新たな正当化手段ではなく、突破口を探しているこの国において、人々のなかで再生産されるのだ。
<ヘイトスピーチの犯罪化>
一方シリア情報省は声明で、ネット空間におけるヘイトスピーチや宗派主義的な扇動を犯罪化する法律の整備が進行中だと述べた。しかしオブザーバーらはこうした措置について、国民と国家の間の信頼を再構築するような包括的な政策をともなわないかぎりは、ネットの言説が、もうひとつの戦争の道具として用いられるようなオープンかつ混沌としたメディア環境においては、不十分なままになる可能性があると警告している。
<国外からの宗派主義的ツイート>
「メルトウォーター」を通じてツイートを分析した報告は、事件が起きてわずか48時間以内に投稿された数千件のツイートが、組織的なネット工作の一部であることを暴いた。この工作にはシリア国外のアカウントが関与しており、その一部は、明確な正体が不明の偽装ネットワークに加え、レバノン、イラク、イスラエルの組織と繋がりを持つものだった。
この分析はジャルマーナー市とサフナーヤー町での事件に関する5,300件以上のツイートに基づいている。分析の結果、これらのツイートの多くはシリア人ユーザーによるものではなく、宗派主義的な物語を広め、いわゆる「デジタル増幅」ネットワークを通じて扇動的な言説を再生産するためにプラットフォームを利用する国外アカウントによるものであることが明らかになった。
(後略)
この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
翻訳者:鈴木美織
記事ID:60072