エジプト: リベラル系政治運動が刑事訴訟改正法に強い反対の立場を表明

2025年05月09日付 al-Quds al-Arabi 紙

■エジプト:野党はスィースィー大統領に対し刑事訴訟法の承認をしないよう求める

【カイロ:ターミル・ヒンダーウィー、本紙】

エジプトのリベラルな政治運動「市民民主運動」の青年事務局は水曜日の夜、議会下院(以下「下院」という)で決定された刑事訴訟関連法案に反対する同国野党のキャンペーンとして、アブドゥルファッターフ・スィースィー大統領にこの法案を承認しないよう求める集会を開いた。

下院は今月4月下旬、野党や労働組合、人権団体の反対にもかかわらず、政府が提出した法案を可決した。

スィースィー大統領が同意すれば法律となり公布される。

「民主市民運動」の青年事務局が主催した集会「刑事訴訟法案を撤回する最後のチャンス」には野党勢力や公人が参加した。集会は非占領地パレスチナの犠牲者への黙とうから始まった。続いて、憲法違反の疑念、公正な裁判の保障と被告人の権利の侵害など、この法律に対する最も顕著な批判について多岐にわたる詳細な議論が行われた。

集会の参加者は、この法律が公共の自由を脅かし、治安機関の支配力を強化し、司法による保障を排除するものだと主張した。また、審議をやり直さずに法案を可決すれば、国家と国民の信頼関係に生じた亀裂がますます深まっていくと断言した。彼らは、国民的議論が決着するまで法律の承認を延期するよう求めた。

国民対話評議委員会のメンバーであるニガード・ブライー弁護士は、「法案は、議論が公開されることも、法律家団体や地域のコミュニティーが参画することもなく、極めて厳しい状況下で作成された」と述べた。

同氏は、「法案は突然現れた」と付け加えた。そして、第一次案が提示された6か月前は、この法律改正の審議が始まっていたことを誰も知らなかったことを明らかにした。

「この法案は、下院の本会議で、社会民主党の反対を除き、ほぼ全会一致で賛成された」と指摘した。また、「弁護士・シンジケートがこの法律に賛成したことは、職能組合の役割低下を示す重大な指標である」と断言した。

また、この法案の成立反対に、弁護士が「驚くほど」役割を果たしていないと批判した。このことが弁護士制度全体を弱体化させ、弁護士を事前の承認なしには事件資料のコピーすらできない名ばかりの存在に貶めている。現行法ではすべての当事者が関連する文書の正式なコピーを入手することができると定められている」と苦言を呈した。

同氏は、ジャーナリスト・シンジケートと独立した弁護士のグループが法律反対の先頭に立っていると考えている。そして、「この法案は調査段階における弁護士の役割を事実上無効にするもので、司法制度の確立した原則である法的手続きの無効性を損なう初めての法案である」と断じた。

最後に、国民対話は刑事訴訟法改正法案とは無関係であると明言し、「話し合いで決める手法」と、「コミュニティーの同意なしに別扱いで起草された法案」を分けて考える必要性を指摘した。

一方、「市民民主運動」のワリード・アマーリー報道官は、「本運動はエジプトにおける政治の民主化を促進するために、政治活動を継続したいと強く望んでいる」と述べた。

アマーリー報道官は集会で、「特に(2016年の)紅海に浮かぶティーラーン・サナーフィール島の帰属問題や、(2019年の)憲法改正後、社会全体が陥った閉塞状態が若者の公務員離れを引き起こした」と指摘した。

そして、「市民民主運動」が最も力を入れているのは、イデオロギーの違いから他党と上手く政策協力が出来ない点など、これまで野党全体に共通していたさまざまな弱点を回避することだと明言した。

また、「市民民主運動」の青年事務局の試みは、野党の政治的スペクトルを一つのテーブルに集めた点で優れた成果をあげたと指摘した。

〈有害な法律〉

「市民民主運動」の報道官は、近年、国民の生活を脅かす悪法が不自然なほど急速に制定されていると断言した。

「エジプト政府がこのような法律をこれほど速く成立させた背景には、エジプトにおける政治の停滞とこうした法律に対する違憲審査制度が十全でなかったからだ」と付け加えた。

そして、「今、野党に求められるのは、これらの法律が国民とその子供たちの将来に与える影響を明らかにし、それに見合う代替案を作成することだ」と強調した。

それに関連して、保守党の立法委員会は、新しい刑事訴訟法について話し合う地域対話セッションを開催した。セッションには国会議員、労働組合および市民社会の代表が出席した。

参加者は、この法律が権利と自由を脅かし、国家の家父長制(Patriarchy)的な手法を強化するものだとして、激しく批判した。

(後略)


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翻訳者:田中友萌
記事ID:60104