シリア:SDF主催のハサカ会議は少数派同盟の芽となるか

2025年08月09日付 al-Mudun 紙

■ハサカ:SDF会議は「少数派同盟」の萌芽となるのか?

【本紙】

ドゥルーズ派の宗教指導者ヒクマト・ヒジュリー師と「シリアのアラウィー派イスラーム最高評議会」のガザール・ガザール委員長が、シリア民主軍(SDF)がハサカで開催した「北・東シリアの構成分子の立場統一に向けた会議」に参加した。多くの解釈によれば、このことは実際、シリアにおける少数派が同盟していることの明確な宣言を意味していると考えられる。

この会議は、統治の「非中央集権(分権)化」と、シリアの全ての構成分子による実質的な参加を保証する民主的な憲法を求めることで合意し、また包括的なシリア国民対話会議の開催を呼び掛けた。そしてこれは、SDFのマズルーム・アブディー総司令官がシリアのアフマド・シャルア大統領と結んだ「3月合意」の潜脱に等しい行為だとみなされた。これについてシリア政府関係者は『アナトリア』通信に対し、「この会議はSDFが、シリア政府との交渉において真剣さを欠いていることを示している」と語った。

SDFは、スワイダーで起きた暴力事件や、血塗られた衝突を招いた宗派間の軋轢を、分権制の要求に対するドゥルーズ派の支持を得る絶好の機会とみているようだ。

また同組織は、スワイダーでの戦闘が終わった今、シリア情勢は変化を遂げており、宗派間の軋轢によって、これを活用することでシリア政府からより大きな利益を得ることができると考えているとみられる。

〈少数派連合:次なるステップ〉

「ハサカの革命勢力による国民同盟」の元代表で政治家のマフムード・マーディー氏は、この会議について、「シリア国家に相対して、シリアの全ての少数派を包摂する同盟を創設するためのSDFによる努力の集大成」とみている。

マーディー氏は本紙に以下のように述べた。「SDFはドゥルーズ派やアラウィー派の一部を誘引し、ハサカにおけるシリア正教の潮流を懐柔した。これは少数派連合をシリア政府に対する圧力の手段として利用し、またシリアのクルド人が切望する『連邦制』の要求への支持を取り付けるためだ」。

マーディー氏は、SDF が国内の不安定な情勢を踏まえ、政治的な機が熟したと考えていることから、次なるステップにおいて「分権制を宣言する独自の憲法」を起草する可能性を否定しなかった。

会議は、シリアにおける少数派の「連帯」を示すことには成功したものの、クルド国民評議会の欠席は、シリアにおけるクルド人の発言権を独占しようとしているSDFに後退をもたらした。特に、同評議会はSDFが今年4月に開催した第1回会議には出席していたためである。

評議会のメンバーであるアブドゥルハキーム・バッシャール氏によると、評議会が参加を拒否した理由について、「SDFは評議会から、シリアにおけるクルド人の代表としての正当性を完全に奪うことに成功し、必要に応じて利用する道具として評議会を周縁化した。その後ハサカ会議を通じて、クルド人をシリアの当局とスンナ派勢力との直接対立に向かわせるための実質的な措置が開始した」と語った。

同氏はさらに「X」で、「この措置はシリアのクルド人の利益と大義、そして安定し、全てシリア人のために統一されたシリアをつくるための努力と完全に矛盾する」と述べた。

〈アラブ部族の代表性の弱さ〉

ハサカとダイル・ザウルに複数筋が本紙に確認したところ、会議では、部族内で影響力を持つ人物を含め、アラブ部族系の有力者の参加が確認されなかった。またこれら情報筋は、部族からは幾人かの「無名」人物が出席していたこと、またSDFが彼らを部族の最前線として紹介したことについて語った。

同複数筋が本紙に伝えたところによると、SDFが退場を思いとどまらせようと介入したアクラム・マフシューシュ師に代表されるように、アラブ部族の「周縁化」に抗議して複数の部族系参加者が会議から退場した。

同複数筋は、SDFと同盟関係にある部族系有力者の不在にも注目した。またこれについて、「部族代表者らは、自らをシリア政府との明確な敵対関係に置くことを避けたいと望んでいる」ためだと説明した。

会議の顛末と、シリア政府が「(前)体制の残党」と呼ぶ人々の参加は、SDFおよびその民間・軍事機関のシリア国家への統合を規定した3月合意の履行が失敗に終わるとの予測を強めたと言えるだろう。この合意は。(合意の失敗は)シリア北東部において軍事的緊張が差し迫っているとの兆候を示している。


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翻訳者:鈴木美織
記事ID:60631