シリア:政府によるクルド国民評議会との対話拒否の真相とは
2025年08月22日付 al-Mudun 紙

■シリア政府はクルド国民評議会との秘密会合を拒否したのか
【本紙】
シリア政府がシリア・クルド国民評議会を対話に招待したことに関して、相反する情報が流通した。ある報告では、シリア民主軍(SDF)による嫌がらせに見舞われるのを恐れて、評議会が招待の受け入れを撤回したと主張された一方で、シリア政府寄りの複数筋はそもそも招待の発出そのものを否定した。
国内の複数サイトは、国民評議会が、対話と、シリアのクルド人の要求や問題についての議論への呼びかけに応じることを撤回したとし、その理由について「評議会がSDFの怒りを恐れている」と説明した。
地元ウェブサイトの「ハーブール・ネット」によると、評議会は非公開という条件のもとでシリア政府との会合に同意した。しかしシリア政府が「地方分権型」統治を形成する体制の模索に関する前提条件を拒否したため、同評議会は参加を撤回した。
意図的なリーク?
シリア政府に近い情報筋は、同政府がクルド国民評議会に対話を目的とした招待を出したことを否定した。そして、本紙に「おそらく評議会はこの情報をリークすることで、SDFに対して圧力を掛けることを望んでいたのであろう。SDFは、今月ハサカで開かれた(諸勢力の立場の統一)会議への参加を拒否したことで評議会を攻撃している。会議は最終声明において、地方分権国家の要求にならび、シリアにおける人種・宗教・文化の多様性を包摂する憲法を要求することを支持した。
さらに同筋は、シリア政府が統治体制の形態をテーマにした議論を行う意向が現時点でないことを明らかにしたた。特に「SDF」が、シリアのアフマド・シャルア大統領が「SDF」のマズルーム・アブディー司令官と結んだ3月の協定の履行を先延ばしにしていることが背景にあるという。
SDFとの対立
クルド国民評議会の報道官は本紙の質問に答えなかったが、ハサカ県政治局の元局長であるマフムード・マーディー氏は、クルド国民評議会がそれを秘密裏の形態とすることを条件としたことから、シリア政府が同評議会との会合を拒否したと述べた。
同氏は本紙に、シリア政府が、会合の非公開を求める要求に対して「公開対面を恐れている者は何の決定も行えない」と回答したことを明らかにした。またこの招待に関して「政府から評議会の主要メンバーに対して向けられたものであり、(所属)政党全体に向けられたものではなかった」と説明した。
シリア政府が、自らがシリアのクルド人を代表しようとしていると主張する「SDF」の道を断つことを目的として、クルド国民評議会を対話に招くという選択肢を取ったのはありえないことではない。
その間「SDF」傘下のメディアは、クルド国民評議会が、クルド人が暮らすアフリーン市の住民が治安部隊に加入するのを「促進させている」として攻撃した。これは、クルド人の若者らが軍やシリアの治安組織への加盟を受け入れていることに対する、「SDF」の苛立ちの大きさを明確に示している。
この状況下でクルディスタン地域では、政府との交渉に備えて、シリアのクルド系グループを結集させるための政治運動がみられている。これに先立ちシリア政府は、交渉がフランスの首都であるパリで行われることを拒否し、対話はダマスカスで行われるべきであるとの条件を提示していた。
シリア政府は先週、パリでの開催が予定されていた「SDF」との会議の参加を取りやめることを発表した。そしてSDFに対し、「外国の干渉から離れた直接対話はさらなる国民理解を広げる」としつつ、3月の協定を履行するよう呼びかけた。また同政府は、シリアの未来に関するいかなる議論においてもダマスカスが唯一の場所になると強調した。
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翻訳者:田中友萌
記事ID:60691