イギリス:イスラエルのジェノサイドに対するスターマー政権の立場
2025年09月09日付 al-Quds al-Arabi 紙

■「政府は国際司法裁判所ではない」…スターマー政権はイスラエルがガザでジェノサイドを犯していないと結論付ける
【ロンドン:本紙】
(英国の)デイビッド・ラミー元外務大臣は自身が送った書簡のなかで、イスラエルの爆撃を「全くもって恐ろしい」と評しながらも「この戦争は基準を満たしていない」と述べ、イスラエルによる対ガザ戦争の性質に対する自国政府の立場を明らかにした。
マット・デイサン氏とアレックス・ファーバー氏が作成し、『タイムズ」が掲載したレポートでは、英国政府はガザにおけるイスラエルの行動をジェノサイドと捉えていないことが記されている。英国政府は先週まで、イスラエルがジェノサイドを犯しているかどうかの問題は裁判所の専決事項であり、各国政府の管轄ではないと主張していた。しかしラミー氏は先週、下院国際開発委員会の委員長に向けた書簡のなかで、外務省が行った評価は、イスラエルの振る舞いはジェノサイドを構成するものではないと結論付けたと述べた。
内閣改造で外務大臣を辞する前にラミー氏が送った書簡には、「ジェノサイド条約に基づくと、ジェノサイド犯罪は、国家的、民族的、人種的、もしくは宗教的集団を全体的あるいは部分的に破壊するという特定の意図が存する場合でしか犯罪とみなされない。そして政府はイスラエルがこうした意図のもとで行動しているとは結論付けなかった」と述べられている。
英国政府が、ガザで起こっていることをジェノサイドでないと明確に述べたのは、これが初めてである。
今年5月には、ハミッシュ・ファルコナー中東問題担当大臣は国会の議員らに対し、「連合王国の確固たる立場とは、ジェノサイド発生についてのいかなる公式決定は裁判所の専決事項であり、政府や非司法機関の管轄ではないということだ」と語った。
ラミー氏は去年、「この政府は国際司法裁判所ではない。我々は裁かないし、イスラエルが国際人道法に違反したか否かを判断することはできない」と語っていた。
この書簡は、下院国際開発委員会のサラ・チャンピオン委員長による辛らつな質問状に返信するかたちで送られた。そこでは、イスラエルに間接的に送られるF-35戦闘機の予備部品を継続的に供給しているという英国の政策が、(英国が負っている)ジェノサイド防止のための国際法上の義務とどのように調和するのかについて返答するよう求めるものであった。
キア・スターマー首相にとっては、これはイスラエルの対ガザ戦争に関する決定的な外交的局面だと考えられ、同首相はイスラエルが厳しい条件を満たさないかぎり、今月中にもパレスチナ国家を承認することが予定されている。同首相は月曜日にパレスチナ自治政府のマフムード・アッバース大統領をダウニング街に迎えた。また水曜日にはイスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領を迎える予定である。
スターマー首相の内閣改造で法務大臣兼副首相に就いたラミー氏は、チャンピオン委員長の質問状への返答のなかで、政府はジェノサイド問題を「慎重に検討した」と述べた。また政府の結論にもかかわらず、ガザでのイスラエルの振る舞いは、女性や子供を含む民間人の犠牲者の数が多いことや、それによる全面的な破壊を鑑み、「きわめて恐ろしい」ものだと評した。イスラエルが「この紛争がもたらす苦しみを防ぎ、緩和するためにさらなる努力を行う必要がある」と語った。
さらに同氏は、外務省はジェノサイド問題に関するいくつかの評価を実施したとしつつ、そのなかには政府がイスラエルへの武器輸出30事例に対する許可停止措置から、F-35戦闘機の英国製スペアパーツを免除する決定を下したときの評価も含まれると付言した。
英国政府は2024年9月、英国製の武器がガザでの国際法違反に用いられる危険性から、イスラエルへの輸出許可を停止した。しかし米国製F-35戦闘機用の英国製スペアパーツの供給に関しては、それが北大西洋条約機構(NATO)による、国際平和を維持するための基本的かつより広範な防衛計画の一部であるとして、停止措置の対象から除外された。
著名な俳優や監督を含む、芸術・エンタメ業界の関係者1,300人以上が、イスラエルの映画機関が「ジェノサイドやパレスチナ人に対するアパルトヘイトに加担している」との考えのもとで、彼らとの仕事を拒否する誓約書に署名した。
俳優のオリヴィア・コールマンやエイミー・ルー・ウッド、スーザン・サランドン、マーク・ラファロは「ガザの虐殺を引き起こした」として多くの政府を批判している。また、「世界でもっとも高位の裁判所である国際司法裁判所が、ガザでジェノサイド発生の潜在的危険が存在しており、イスラエルの占領とパレスチナ人に対するアパルトヘイト政策は国際法違反であるとの判決を下した」と語った。
「パレスチナのための映画産業従事者」がイスラエルの映画産業の「大多数」がパレスチナ人の権利を一度も支持したことがないと主張しつつ、当該の誓約を拡散した。
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翻訳者:田中友萌
記事ID:60750