―続き―
◆言葉の間にひとときの安らぎ
首都の喧騒の中で、コーヒーの香りと一切れのケーキの味わいは、時に読書の楽しみを倍増させる。近年テヘランの至る所に広まった、居心地の良い文化的な集いの場である「カフェ・ケターブハー(本のカフェ)」は、読書と社交の楽しみを心地よい組み合わせで提供してくれる。エンゲラーブ通りやキャリームハーン通り周辺の古くてノスタルジックなカフェから、テヘラン北西部の現代的で洗練された場所まで、それぞれが独自の建築とメニューで本好きたちを迎え入れている。これらの場所は、ただ本を買うためだけの場所ではない。本の批評会や新刊発表会、文化的な語らい、さらには静かに仕事や読書をする場となっており、本が今なお街の最も温かな集まりの中心になり得ることを示している。
◆ある過去の思い出
エンゲラーブ通りがイランの書籍市場の鼓動する心臓部となる以前、その栄誉は「ナーセル・ホスロー〔11世紀の詩人・旅行家・イスマーイール派教宣員の名〕通り」のものだった。1320年代から1340年代(西暦1940年代から1960年代)にかけて、この通りは旧テヘランの印刷所、出版社、書店の主要な中心地だった。当時の知識人や文士たちは、最新の作品の執筆や、議論や意見交換のためにこの通りに集まっていた。印刷用インクや紙の香りは、ナーセル・ホスロー通りとは切っても切り離せないものだった。今日この通りは別の方面からよく知られているが、今なおあちこちで首都の書籍文化の歴史の足跡を見つけることができる。
―(了)―