メッカ同盟は、イスラム諸国のNATOになるか―7つの問い
2026年08月16日付 Medyescope 紙

8月7日にメッカでトルコ、サウジアラビアそしてパキスタンの間で調印された合同条約で前面に出ている決定は非常に重要だ。「同盟国の一つに対して武力攻撃は、その他の国々に対しての攻撃とみなされる。」全ての人々の脳裏に浮かぶ連想は、外務大臣ハーカン・フィダンもおこなった。そしてこの決定を、技術的にNATOの第五条と同じであると述べた。自然の成り行きとして、条約のすぐあとで「ムスリムたちのNATO」という回答がなされはじめた。
しかしながらこの条約について私たちが把握していることと同様な程度、私たちが知らないこともまた重要だ。条約のすべてが、世間に明らかになったわけではないのだ。どの攻撃が、合同攻撃を実行させることになるのか、同盟者ちはどの条件で、またどのレベルで軍隊派遣支援をおこなうのか明確ではない。しかしながら、開いてみればすでに調印がなされた合同防衛パッケージが存在している。ちょうどこの理由で、とりわけトルコの視点から、ただ「私たちに対して攻撃が行われれれば、私たちの側にだれがいるのか?」となるだけではなく、「私たちは誰の戦争に対して、その側につくと誓うのか?」と問いかけなければならない。メッカ条約について今日わかっていること、そしてまだわかっていないことを7つの問いかけでまとめよう。
1) なぜ今なのか
メッカ条約を、中東において今日の初めから起こっていて、そしてその影響が全世界に広がっている戦争とは無関係と評価することは不可能というのは明らかだ。
2月28日にアメリカとイスラエルがイランに対しての攻撃を始めて、拡大をした戦争においてイランと同盟国たちが攻撃を湾岸諸国に、エネルギーインフラ、そして海洋貿易ルートを直接的に影響を及ぼしたのを目の当たりにした。サウジアラビアもまた始めるのを望まず、そして可能な限りは外にとどまっていようとしていた戦争は、次第にさらに標的となる状況になった。リヤドの前にある根本的な問いは、直接的に戦争に巻き込まれる前に抑止力をどのように強化するかということだった。
メッカ条約も、ちょうどこの条件下に調印がされた。しかしながらただ最後の戦争の結果というわけではない。ハーカン・フィダン氏によれば、会談は約3年間にわたって続いていた。つまりは戦争が合意を生んだわけではない。実際のところ続いていた探索の活動をはやめて、そしてそれに対してさらに大きな戦略的な意味を持たせた。
これもまた私たちを合意の後ろにあるさらに大きな転換へともたらす。
2)アメリカの中東における防衛の傘は解決するのか?
メッカ合意の根本的な重要性は、ここに横たわっている。中東におけるアメリカの傘が完全に取り除かれるわけではない。しかしながら最近の年月に起こっている事態そしてとりわけ、イラン戦争は地域の政府に対して、これだけでは十分な防衛ではないということを、完全にその脆さも明らかにして示したのだ。サウジアラビアからトルコに至る地域のアクターたちはワシントンとの関係を守る中、安全保障の形を多様化させること、そして次第にさらに自分自身の領域における同盟を守ろうとしている。
つまり、アメリカに対しての依存が減少して、安全保障関係が多様化して地域的なアクターたちの安全保障の遺産をよりおおく自分たちの手で得ようとした非常に重層的な中東のバランスの示唆であるとみなす必要があるのだ。とりわけ、今回は二者関係だけではなく、地域の重要な大国たちをそれぞれに結び付けるより影響力のある合同防衛の進展について言及をしている。
長年私がその動向を追い、また以前の私の記事においてもその見解がとても益した外交問題評議会のアナリスト、スティーブ・クック氏もまたメッカ条約を、まさにこの大きな転換の中で読み解いている。さらにはさらに前に進み、その記事の中では「アメリカ合衆国の先導の中東の秩序は終わった。メッカ条約はこのことを裏付けている。」というタイトルをつけている。クック氏によれば条約の最も重要なポイントは、3か国が明日にも本当に戦争をするかどうかというよりは、地域の重要な勢力の安全保障をワシントンよりさらに大きな
独立した組織の統治についてなのだ。
この探求は、ただ政治だけではなく非常に具体的な軍事的理由もある。大西洋評議会が8月14日に発表した分析が指摘したように、イラン戦争はアメリカの防空兵器備蓄への重圧も浮き彫りにした。サウジアラビアにとって、安全保障を単一の外部供給国に依存することは、ますますリスクが高まっているという点も、問題の一部である。まさにこの点において、トルコは軍事力と防衛産業の両面において、特にサウジアラビアにとって代替の安全保障パートナーとして浮上してきたのである。
アメリカを除いた地域的防衛同盟が結成されたことに対してのイランの最初の反応もこの観点から興味深い。テヘランは、この合意が自身に対して向けられた脅威として提示する代わりに、地域の国々が安全保障について外部の勢力への依存がより少なくなること言就いて好意的に反応したのだ。これに対してイスラエルメディア(Yネット)に対してあるイスラエルの高官は、合意をはっきりと「イスラエルに対しての同盟」と特徴づけた。
3)本当に「ムスリムのNATO」が結成されるのか
この比喩の由来は明らかだ。メッカのような象徴的に非常に重要な都市で、イスラム教の三大国が一堂に会し、三銃士の有名な「一人は皆のために、皆は一人のために」という誓いを彷彿とさせる共同防衛協定に署名したのだ。
さらに、「イスラム版NATO」は単なる表面的な比喩にとどまらない。この合意を受けて、パキスタンのホワジャ・アシフ国防相は、イスラム諸国に対し、NATOに類似したより広範な安全保障プラットフォームに集うようによびかけた。
これら3カ国は、互いに補完し合う重要な能力も有している。トルコは強力な通常軍と発展途上の防衛産業を擁し、パキスタンは大規模で経験豊富な軍隊と高度なミサイル能力、そして核兵器保有能力を持つ。そして、莫大な財源と非常に高い国防費を誇るサウジアラビアが、この方程式の3本目の柱となる。
この協力は、文書上の共同防衛協定にとどまるものではない。共同演習から防空、無人システムから電子戦や人工知能、共同生産や技術移転、ロジスティックに至るまで、幅広い軍事協力を想定しており、外交、防衛、軍事行政の各レベルにおける共同メカニズムも含まれる。
しかし、NATOとの比較には限界がある。たとえ3カ国が最大限の協力体制を築いたとしても、歴史的経験、能力、作戦統合の面で、この組織をNATOと比較することは不可能だ。NATOは単に第5条だけではない。共同指揮系統、共同防衛計画、軍事標準化、そして数十年にわたる作戦統合の実績を備えているのだ。
したがって、今日では、NATOの集団防衛の原則をモデルとした地域安全保障パートナーシップが構築されつつあるが、その実際の軍事的責務や限界は依然として不明確であると言う方がより正確だろう。実際、リヤドはこれが「軍事枢軸」でも「宗派ブロック」でもないことを明確に強調している。
ここまでは、書類上はすべて整合性があり、機能的にも問題ないように見える。しかし、最も根本的な疑問は未解決のままだ。トルコ、パキスタン、サウジアラビアは、一体誰に対して互いを守るのか?なぜなら、トルコ、パキスタン、サウジアラビアは、脅威に対する認識が異なっているからだ。
4)パキスタンとインド再び戦闘に入ればトルコも戦争に巻き込まれるのか?
私にしてみれば、トルコ観点から合意について問われなければならない最も重要な問いがこれだ。私たちは通常、防衛同盟について、同盟国が私たちに提供してくれる保証に基づいて議論をする。トルコが攻撃された場合、パキスタンとサウジアラビアは支援に来てくれるのか?しかし、この協定はトルコにも義務を課している。
パキスタンとインドの間には何十年にわたる対立関係があり、幾度となく戦争に発展し、両核保有国が直接対峙してきた。カシミール問題は未解決のままであり、新たな軍事衝突の可能性は単なる理論上の話ではない
なので、条約の根本的な決定を単語ごとに読み解いてみよう。パキスタンに対しての武力攻撃は、トルコに対しての攻撃とみなされるだろう。明日にもインドとパキスタンが再び戦争にはいれば、トルコはインドに対峙することになるのか?
わからない。公にされている決定は、この疑問への回答を与えない。
インドの反応もこのため厳しいものだ。ニューデリーは、合意が自身の国内防衛の影響力を評価していること、そしてその利益を守るために「必要なあらゆる対策」をとると発表した。これに対して現在にまでNATOもしくはヨーロッパ連合からの似たような規模の明確な政治的な反応はない。
とりわけ合意この不明確さに対しての最初の小さなテストが、まだ署名のインク壺もできないタイミングでやってきた。二日後にイエメンのフーシ派、サウジアラビアのジザン地域にあるアラムコ基地を攻撃した。これにも関わらず、合同の防衛決定の実行についてのいかなる発表もされなかった。つまりは、「私たちの誰か一人に対しての攻撃は全員に対しての攻撃だ」というフォーミュラの履行は、いつどのようにおこなわれるのかいまだに不明確だ。
果たしてサウジアラビアとイランが直接争えばトルコの責任はどうなるのか。もしくは、この疑問を逆に試用。トルコとイスラエルの間でシリアもしくは東地中海で直接的な攻撃が起こった場合、パキスタンは本当にイスラエルに対して、トルコ側につくのか?
5)パキスタンの核兵器の傘はトルコを守るのか?
この合意をめぐる最も注目すべき憶測の一つは、予想される通り、パキスタンの核抑止力に関するものだ。
パキスタンは核兵器を保有する唯一のイスラム教国である。サウジアラビアとパキスタンの緊密な軍事関係を鑑みると、パキスタンの核抑止力がリヤドにまで及ぶかどうかという問題は長年議論されてきた。メッカ条約により、トルコもこの議論に加わることになった。
しかし、私たちの周知のことと憶測を区別することが必要だ。これまでに発表された条項のいずれも、パキスタンが核抑止力をトルコやサウジアラビアにまで拡大したことを示唆するものではない。リヤドもこれを明確に否定しており、サウジアラビア当局者は、この合意は核開発の野心や軍拡競争とは一切関係がないと特に強調している。
したがって、「トルコがパキスタンの核の傘下に陥った」と言う具体的な根拠はない。
しかし、核兵器保有国が関わる集団防衛条約において、この能力を抑止力計算から完全に切り離すことは可能なのか、という疑問が残る。
6)三か国同盟は広がるのか?
ハカン・フィダン氏は、エルドアン大統領が協定を3カ国だけに限定することを望んでいないと明言した。同様に、エルドアン大統領も土曜日のアルジャジーラとのインタビューで、エジプトの協定参加について言及した。実際、トルコ、サウジアラビア、パキスタン、エジプトは、戦争中すでにR4の枠組みの中で連携しており、カイロは協定参加の法的・制度的側面を検討していると報じられている。カタールの名前も挙がっているが、そのプロセスはエジプトほど具体的ではない。
エジプトのような広大なアラブ国家が加わることで、この組織は三国間の安全保障パートナーシップをはるかに超えたものとなり、「イスラムNATO」という言葉がより魅力的なものになる可能性がある。
しかし、地域的、地政学的、そして歴史的なバランスに関して、面白い逆説が存在している。同盟が拡大するにつれて、その軍事的・政治的影響力は増大するかもしれないが、共通の脅威を定義することはより困難になる可能性がある。パキスタンのインドに対する安全保障上の懸念、サウジアラビアのイランとイエメンに対する懸念、そしてトルコのイスラエルとシリアに対する懸念は、同じではない。エジプトやカタールが加われば、このリストに新たな優先事項が加わることになるだろう。
7)トルコはこの協定から何を得て、何を失うのか?
トルコにとって、明確なメリットが2つある。第一に、変化する中東の安全保障構築を形成する主体の一つとなり、安全保障同盟のポートフォリオを拡大できることだ。米国への依存度が低下し、構造がますます多極化する新たな秩序において、トルコの軍事的・政治的影響力の増大は、アンカラが長年追求してきた「戦略的自律性」と合致する。
2つ目の、そしておそらくより具体的な分野は防衛産業である。サウジアラビアの財力と巨大な市場、そしてトルコの無人航空機、防空、サイバー戦力、共同生産における能力向上を組み合わせることで、大きな経済的機会が生まれる。パキスタンは顧客であると同時に、生産および技術パートナーにもなり得る。
しかし、こうした成果には深刻なリスクが伴う。トルコが戦略的自律性を高めるにつれ、安全保障上の責任を負うエリアも拡大していくからだ。パキスタンとインドの紛争地域、そしてサウジアラビアとイラン、イエメンの紛争地域は、少なくとも書面上は、トルコの安全保障上の計算に含まれるようになった。
さらに、協定の範囲を決定づける最も重要な条項は、依然として一般には知られていない。
したがって、トルコにとっての真の問題は、見た目以上に複雑である。アンカラは、アメリカ中心の安全保障秩序の弱体化によって生じた空間において、より独立した強力な地域アクターになりつつあるのか、それとも、パキスタンから湾岸地域まで広がる、境界線が曖昧で、必ずしもトルコの直接的な安全保障上の利益と一致しない可能性のある新たな紛争の線に自らを縛り付けているのか、という問題である。
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翻訳者:堀谷加佳留
記事ID:62675