「密輸の7割は1500名による犯罪」:密輸対策本部書記、密輸の実態について明かす
2009年10月26日付 Jam-e Jam 紙

【経済部】「密輸・不正外貨取引対策中央本部」書記は、イランにおける密輸犯罪の取り締まりをめぐる法的取り組みや権限について、新たな情報を明らかにした上で、「密輸の7割は〔主要密輸業者〕1500名の手によるものだ」と述べた。

 複数の通信社が伝えたところによると、ハミード・レザー・タギーザーデ書記は、彼らこそイランの密輸組織の中枢を構成しているとし、さらに「彼らは密輸団を組織して、一部の人々を密輸に引き込み、利益を上げている。プロの密輸業者が巨利をむさぼる一方で、末端の密輸人の手取りはわずかなものだ」と述べた。同書記は法的に禁じられていることから、密輸に関わっているこれらの人物の実名や素性については明らかにしていない。

 同書記はこうした人々が「不死身」であることについての重要な最新情報に触れ、法律から逃れるための安全地帯の存在を明らかにした上で、次のように指摘した。「こうした人々の中には、複数回にわたって逮捕されたことのある者がいる。さらに刑期を終えないうちに、刑務所から一時釈放ないしは仮釈放されるや、すぐさま密輸に手を染め、新たな事件を起こす者もいる」。

 イランにおける密輸問題についてのタギーザーデ氏の発言には、あまり心地の良くない、心痛む告白が含まれている。「問題の解決と大物密輸業者の摘発に向け、密輸対策本部は日夜努力を続けているものの、いまだ芳しい成果は上がっていない。こうした連中の取り締まりが思うようにいかない理由の一つに、事件の調査に時間がかかることが挙げられる。密輸業者の中には経験豊かな弁護士を雇って法律の落とし穴を利用し、事件を事件でなくしてしまう者もいる」。

 密輸犯罪の調査・取り締まりの総本山であるはずの密輸取締本部の責任者の口から出されたこのような発言は、様々な点から吟味してみることができるだろう。タギーザーデ氏の発言は、長年にわたり存在し、人々もその存在を感じ取っている、にもかかわらずこれまで密輸対策のトップが認めようとしてこなかった、そうした現実を示唆するものだからだ。

 携帯電話をはじめとする商品の正規代理店の多くがイランでのビジネスをたたんで、すでに何ヶ月にもなる。安価な密輸携帯端末が市場に大量に入り込み、消費者が正規の端末に見向きもしないことが、その原因となっている。消費者にとっては、保証書やアフターサービスなどなくとも構わない、安ければいいのである。事情はその他の家庭用品や衣料品などでも同じだ。しかし、これまで関係当局はこの問題について沈黙を続けてきた。

 大型密輸事件をめぐる問題は、これまで何度も経済腐敗対策本部で取り上げられてきた。しかし同本部の対策会議は不定期・断続的で、しかも調査の結果が国民に正しく伝えられることもなかった。そのため、今や1500人に上るとされた「大物密輸業者」というのが誰のことなのか、実際のところを知る者は誰もいないというのが現状なのである。

 彼らはどの人物の庇護を受けているのか?もし〔1500人という数字が〕特定されているのなら、なぜ取り締まりが行われないのか?大物密輸業者の庇護に、政治集団の関与はあるのか?この問題をウラで動かしている人物は、誰なのか?そして最後に、法律はなぜ、こうした経済腐敗分子への毅然とした取り締まりを行うことができないのか?それとも法律による取り締まりをさせようとしない人物がどこかにいるのか?こうした疑問に対する答えを、誰も知らされてはいないのである。

 密輸・不正外貨取引対策本部が設立されて何年も経ち、何年にもわたって対策が講じられてきたにもかかわらず、同本部が現在この程度の成果しか残せていないというのは、遺憾なことだと言わざるを得ない。このような状況に責任を負うべきなのは、誰なのだろうか?

 タギーザーデ書記は、現在調査中の最大級の密輸事件の額は、約4千億トマーン〔約400億円〕にのぼることを指摘しつつ、こうした大物密輸業者の実名・写真・詳細の公開を同本部が自粛している理由について、次のように述べている。「本部がこうした行為を取れば〔一般国民から〕歓迎されたかもしれないが、しかし法律に従えば、そのためには司法権から許可を得なければならない。本部は現在それを検討中だ」。

 同書記はさらに、「現在、〔合計で〕1兆5千億トマーン〔約1500億円〕を超える規模の大型密輸事件1800件が、様々な機関で取り上げられ、調査が行われている」とも指摘、その上で「これらの調査中の事件は、組織的に活動しているプロの密輸業者幹部に関連するものだ。各事件は、1億トマーン〔約1千万円〕を超える規模の事件だ」と続けた。

 同書記はまた記者団に対し、大物密輸業者に対する同本部の最近数年間の対策について触れた上で、「これらの事件の規模は1億トマーンから4千億トマーンと様々で、密輸業者が手を付けなかった商品はないといってもいいくらいだ」と語り、さらに密輸業者が密輸した商品は主に28品目で、そのうち12品目が補助金の対象となっていると指摘した。

 同書記によると、近年密輸額の平均が大規模化してきており、かつては1300万トマーン〔約130万円〕だった一件あたりの密輸額の平均が、3600万トマーンに上昇しているという。

 「小規模な密輸事件は毎年1万件ずつ減り続けており、一年間に刑務所行きになるのは9千人弱だ」。タギーザーデ書記はこう述べ、さらに「密輸・外貨不正取引対策中央本部には、大型事件を特別に調査するためのタスクフォースが立ち上げられた。こうした措置によって、〔本部が取り扱う〕密輸事件の額も、300%上昇している」と語った。

〔中略〕

「補助金の目的化によって密輸も減るはず」

 タギーザーデ書記はまた、「現在国会で審議中の補助金の目的化法案が施行されれば、密輸の量も5%以下に減るだろう」と指摘する。「補助金目的化法が施行されれば、様々な商品が補助金の対象から外され、補助金を受けた商品の密輸の流れが断ち切られることになるだろう」。

 同書記によると、補助金の目的化は燃料の密輸に特に大きな影響を及ぼすはずだという。「このような法律が施行されれば、この分野での密輸もなくなるはずだ」。タギーザーデ氏はさらに、「政府の補助金を受けている一部の農産物備蓄の密輸も、これらの産品の国内での価格設定に依存している」と述べ、こうした物品が近隣諸国でより高く売れるのであれば、密輸が行われるのも当然だと指摘する。
〔※訳注:密輸は国内外の価格差が原因であるため、補助金によって安く抑えられたイランのガソリンなどが周辺諸国に密輸されやすい構造ができあがっている。それゆえ商品に投じられる補助金を廃止することが、密輸を撲滅する根本的対策となりうる、という論理〕

〔中略〕

 タギーザーデ書記によると、密輸推計額を算出するために5つの専門グループがそれぞれ別個に調査を行ったが、各調査結果に開きがあったため、現在数字の公表は行われていないという。

 これより前、密輸対策本部が大統領府に書簡を送り、年間の密輸額が160億ドルにのぼるとの推計を報告したとの噂が一部で流れたが、タギーザーデ氏はそのような事実はないとの見方を示した。〔‥‥〕同書記は82年から83年〔西暦2003〜4年〕にかけての密輸額について発表された最新統計に触れ、「当時、専門家らが口頭で指摘した推計額によれば、密輸の規模は60億ドルから120億ドル程度とのことであった。本部としては、最低でも60億ドルはあるのではないかと考えている」と述べた。

アルコール飲料の密輸は組織的

 タギーザーデ氏によると、アルコール飲料の密輸は完全に政治・治安上の問題であり、状況証拠からもそのことは証明されているという。

 「アルコール飲料は無料で、しかも保険まで付けられて、正式な国境ルートを通って国内に流入している。このことからも、一部の組織化された集団が関与していることが分かる」。

 同書記はその上で、「問題の重要性に鑑み、外務省及び情報省に対して、この件についてきちんとした調査を行うよう要請している」と強調した。

〔後略〕

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:17747 )