イラン人映画監督に「取り囲まれる」キュロス:3人の監督がキュロス映画に関心
2010年10月31日付 Jam-e Jam 紙


【文化芸術部:レザー・オスターディー】文化や芸術の世界も、その他のあらゆる領域と同様に、「流行」という現象の影響下にある。かつて、「ハリー・ポッター」やポール・オースター〔※アメリカの小説家・詩人〕、パウロ・コエーリョ〔※ブラジルの作詞家・小説家〕、「ザ・シークレット」〔※古今の著名人の成功と幸福の秘密を「解き明かした」スピリチュアル系自己啓発本〕などの本の翻訳・出版は、イランでも大いに流行ったし、実際、書店などに行けば、これらの作品の翻訳を複数種類、見かけることができた。

 そして現在、こうした状況は映画の世界にも「伝染」している。映画という魅力的アートのファンたちは、アケメネス朝の王キュロスの伝記を3つの異なった映画で観賞する日が来るのを、今から指折り数えて待つとよいだろう。「アズィーゾッラー・ハミードネジャード」、「マスウード・ジャアファリー=ジューザーニー+アリー・モアッレム」、そして「モハンマド・ダルマネッシュ」の3人の映画監督が、キュロス伝をカメラに収める決意を語っているのだ。

〔‥‥〕

 アズィーゾッラー・ハミードネジャードは1384年〔西暦2005年〕からキュロス伝の映画『ゾルガルネイン』〔※〕の制作を模索しているが、この企画に関する詳細については、多くを語ろうとしない。
〔※「ゾルガルネイン」とは、「二つの角をもった者」という意味で、コーランに見られる表現。一般的にはアレクサンダーを指すと言われているが、キュロス二世を指すとする見解もある〕

 彼は、新たな発言がマスコミ上での論争を引き起こしかねないと懸念を口にしているが、彼が内密の話として言うには、映画はファーラービー映画財団での制作前の段階にあり、2年前に国会議員らとも話をして、企画への支援の約束を取り付けた、プロデューサーを務める人物もすでに決まっている、という。

 ここ最近、「イラン主義」、ないしは〔歴史的人物の〕「イラン化」についての話を耳にする機会が増えている。連続ドラマ・シリーズ『モフタルナーメ』も、「イランの歴史的人物」たちを描き、肯定的・否定的、さまざまな反応にあっている〔※〕。
〔※『モフタールナーメ』は、第三代イマーム・ホセインの仇を討とう立ち上がった7世紀のシーア派指導者モフタール・アブー・オベイド・サガフィーらの活躍を描いた人気テレビ・ドラマ。ここで本記事が示唆しているのは、「モフタール」は現在のイラク南部に位置するクーファの民であり、民族的に「イラン人」ではあり得ないのだが、そういう歴史的人物がイラン人であるかのように描かれる(イラン化される)傾向が近年多くなっている、ということである〕

 こうした状況のなか、マスウード・ジャアファリー=ジューザーニーとアリー・モアッレムの二人も、ハミードネジャードに続いて「キュロス伝作り」という奥深い仕事にチャレンジしようとしている。

〔‥‥〕

 モアッレムのこの言葉から、彼はこの映画を制作するのにさほど急いでいるわけではない、ということが読み取れるだろう。こうした中、「聖なる防衛」〔※イラン・イラク戦争のこと〕をテーマとする作品を多く作ってきた映画監督のモハンマド・ダルマネッシュも、「キュロス作り」の世界に参戦しようとしている。アンスィーイェ・タージークとの共著による119ページに及ぶプロット『キュロスの一生』を書き上げた彼は、すでにその脚本作りも〔‥‥〕始まっていると発表している。

〔‥‥〕

 ダルマネッシュは、次のように述べている。
最近、国の内外からイランの歴史的過去への攻撃が盛んになっている。実際、一部の国内コメディ作品や海外の映画作品が、〔イランの〕過去の言葉や文化に対して攻撃を仕掛けている〔※映画『300』や『ペルセポリス』などを念頭に置いているものと思われる〕。

こうした状況では、今の世代の人たちが自身の過去に対して関心を持たず、外国からの攻撃を何でも受け入れ、それに簡単に服してしまうという危険が厳に存在する。

今日まで、イランで作られた歴史映画は、宗教的人物についての映画であるか、あるいは〔モーセなどの〕イスラエルの民の預言者たちについて描いた映画か、そのいずれかで、自分たち自身と〔古代から続く〕自らの文明や歴史との関係性について、明確化する作業をこれまで怠ってきた。

 こう述べるダルマネッシュにとって、キュロスは「完全人間」に他ならないという。
〔※「完全人間」とは、イスラーム神秘主義思想においてあらゆる対立を越えた特別な存在のことで、端的には預言者ムハンマドなどが想定されてきた。キュロスが完全人間であるという指摘は、それゆえ、キュロスはムハンマドやイエスなどの歴代の預言者、ないしはシーア派のイマームにも匹敵する存在である、というニュアンスをもつ〕

〔‥‥〕

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( 翻訳者:山本和代 )
( 記事ID:20633 )