アサド大統領インタビュー(5)―「アラブの春」は世俗政権を脅かす
2012年07月07日付 Cumhuriyet 紙

インタビュー1:撃墜事件はおこるべきではなかった
インタビュー2:エルドアンは神の啓示でも得たのか?
インタビュー3:すべて、想定外
インタビュー4:トルコも痛い目にあう
インタビュー5:「アラブの春」は世俗政権を脅かす

シリアのバッシャール・アサド大統領は、中東および北アフリカでの市民革命について、「アラブの春はこの地域にもっぱら涙、血、そして死をもたらしている。また同時に、シリアから世俗主義を取り去っていく」と評価した。

アサド大統領は、この地域の地図が新たに書き変えられていると述べ、「以前は、アラブ世界にはロレンスは一人だった。しかし今、無数のロレンス達がいる」と話した。アサド大統領はトルコの公正発展党(AKP)政権もこの地域で、「イスラム的政治」という役を演じているのだと語る。

■「革命はテロリストではなく市民が行うもの」

アサド大統領は、本紙へのインタヴューの最終章で、中東と北アフリカで発生中の市民運動についても評価した。この1年、彼の国にせまる「アラブの春」に関するわれわれの問いに、アサド大統領はつぎのように答えた。

-大統領は、アラブの春をどう評価しますか?

「春」という単語はよいこと、素敵なことを連想させる。にもかかわらず、私たちの地域で「春」と呼ばれているものは、われわれを不愉快にし、今もし続けている。この地に生ではなく、死をもたらしているのだ。春には死、涙、血などない。革命について語るとしたら、革命は市民が行うものである。武器をもったテロリストがおこなうのではない。革命は、国民と国家を前進させるために行われるもので、そのように実現する。社会を時代遅れとし、後退させるものは革命などではない。革命は、政治的、文化的、社会的な計画により進められる。もしも革命が空虚さをもたらし、この空虚さが今度は混乱をもたらすのならば、それは革命ではありえない。

■無数のロレンスがいる

われわれは歴史的な時期を過ごしている。われわれの地域で地図が新たに作り直されているのだ。かつて一人のロレンスがいた。いま、無数のロレンス達が出て きた。われわれの国で現出されようとしているこの動きが、西側のいかなる計画に資するものなのかをしばらく模様眺めすることが必要だ。しかし、外圧による革命というものは、彼らの利益に向けて利用されるのが明らかだ。われわれの地域には、2種類の国家がある。ひとつは、自国の利益のため活動している。そしてもう一つは、どこかからやってきた洗脳によって。

■「宗教を守る世俗主義」

-チュニジアとエジプトで、アラブの春の結果、ムスリム同胞団が政権についたことをどのようにとらえていますか?

われわれは、シリアでは宗教に賛意を示しているが、宗教の政治化には反対の立場に立っている。宗教は政治を超越したものだからだ。両者を決して並列させてはならない。 宗教を政治目的に使用するということは、本当はその宗教を侮辱し、貶めることになるのだ。宗教に対しても害をなし、信仰に敬意を示す社会を痩せ細らせるのだ。動揺した社会を宗派対立を煽って、分断させるのはなお簡単だ。以上のような理由から、われわれは世俗主義が宗教と対立せず、むしろ世俗主義は宗教を守る考え方であると一貫して主張する。

■「ゴールには”世俗主義”がある」

つまり、われわれの地域で生起する出来事はすべて次のように解釈できるだろう。この地で目下起こっているすべての出来事は、世俗的なシステムを傷 つけ、除くことを目的としているのだ。世俗主義を排除した際に、大国は、この地域で望んだことすべてを、より容易に達成するだ ろう。

われわれはこの動きを疑い深く見つめている。つまり、宗教の政治化がいかに危険かを知りつつある。結局そのために、われわれはシリアで宗教の政治化を決して認めないのだ。この発言に陰口をたたく者、この問題で策を講じる全員を、疑いのまなざしで見つめている。

■トルコの役割:イスラムを政治化する

-大統領の描く枠組みにおいてトルコの立ち位置はどこですか?

この質問については、トルコ政府とトルコ国民とでそれぞれ異なる。私はトルコ国民を本当によく知っていると思っている。トルコ国民は現代的で聡明である。一方でトルコ政府と内部の何人か政治家は、より偏狭な態度を示している。物の見方が一つしかなく、その狭い視点で活動している。この政権も、私がいま 説明した大きな芝居のなかで、地域における自身の役割を追求している。その役名は「イスラムを政治化すること」だ。

■野党をダマスカスへ招待!

それでも、私はトルコ国民の良識と親愛さを信頼している。トルコ国民は、政府が国民を敵対的な冒険の試みや戦争に向かうこと許さないだろうと考えている。 トルコ政府が私についてどう考えていても構わない。私やシリア国民はトルコ国民に敬意を感じている。シリア領内での航空機墜落事故は、シリアとその国民への感情に影響した考えられる。私がトルコ国民に望んでいるのは、この関係を全力で守ることだ。われわれは同じことを成し遂げようとしているからだ。トルコでいるすべての野党に、シリアにやってきて状況を自身の目で確かめることを勧める。

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( 翻訳者:原田星来 )
( 記事ID:26953 )