Ismet Berkan コラム:第三空港運営を220億ユーロで落札することの意味
2013年05月04日付 Hurriyet 紙

私は経済学者ではないが、数字を読み解くのは好きだ。イスタンブルに建設予定の新空港運営権(期間25年)の入札が昨日行われ、Limak社、Cengiz社、Kolin社、Mapa社、Kalyon社の共同企業グループが、信じがたいほどの額で落札した。

25年間の新空港運営権を希望したこの企業グループは、政府に付加価値税(KDV)を除く221億5200万ユーロ(約2.87兆円)を支払う予定だ。各社は政府へのこの支払いのほか、工事、つまり空港ターミナル施設の建設も行う予定である。
さて、新空港は最終的には年間1億5千万人の旅客輸送を見込んでいるが、開港初年からこの数字に到達するとは考えにくい。この数字が実現するには最低でも10年はかかるだろう。
もちろん私は経済学者でもなければ、実業家や企業家でもないので、今回の入札のために長期間熟考を重ね、これほどの額を提示した企業家の事業計画や懐具合、収益予想は知る由もない。しかし、知らないからといって過小評価しているわけではない。ただ、軽く試算してみたいと思っているのだ。
25年間の空港運営権が、約250億ユーロに見合うものかどうか検証してみようではないか。
(実際の数字はこれよりも大きいが、今回、試算を簡略化するため250億ユーロとしておく)

まず、金融コストをまったく考慮に入れなかったとしても、年間10億ユーロの採算をとらねばならない(ここでも、本コラムの簡潔化をはかるため、金融コストは考慮しないこととする。そうでもしなければ、毎年、どんなに安くてもロンドン銀行の取引金利レベルで借入れていかないと試算が成り立たない。)

年間1億5千万人の旅客が訪れる前提で、賃貸料を支払うためだけでも旅客1人あたり、6.7ユーロ+付加価値税の利益を上げる必要がある。いや、これでは足りない。
賃貸料のほかに、運営上の支出も別途あり、全支出を合計すれば、合計売上額に対し最低でも15~20%程度の純利益を見込む必要がある。つまり、1億5千万人の旅客数が達成できたとしても、旅客一人あたりの純利益が20ユーロ+付加価値税(あるいはそれ以上)を下回ってはならないことになる。
しかし、冒頭で述べたように、年間1億5千万人の旅客目標は開港してすぐに実現可能な数字ではない。
そこで、空港運営権を落札した各企業は、この旅客目標到達のため、新空港をやたらお金のかかるものにはしたくないと考えているはずだ。
要するに、旅客一人あたりが空港に落とす金額には限界があるのだ。

同様に、運営側がターミナル施設内のテナントからテナント料を要求する場合にも、上記の理論に沿った動きがみられうだろう。駐車場運営やタクシー利権の保証にも、採算のバランスが重視されるはずだ。

さて以上を読んで、私が悲観的な見方をしているとは思わないでほしい。入札に勝利した各企業は、私が本コラムで羅列した懸念事項の最低10倍の事柄を社内で検討していることは疑いようがない。220億ユーロ以上もの額で3グループが競り合った入札で、入札額の引き上げを行ったこれらの企業は、当然、私よりもしっかりとリスク計算をしているだろう。

それらを踏まえ、本当は第一に書かねばならなかったことをここで述べよう。220億ユーロという数字は、イスタンブル、ひいてはトルコの将来に対する信用の結果なのだ。
この膨大な金額は国家収入となり、どのような形であれ私たち国民に還元される。それにより私たちが手にするインフラや公共サービスの質が向上すれば、国民への財政支出はより抑えられるだろう。

さて、今更ではあるが、今回新空港の話題をコラムに書かなかったとしても、私は新空港に関して深刻な懸念を抱いていた。そもそも新空港はイスタンブルに必要なのか、一貫して疑問を呈していた。しかし、昨日発表された落札額により、この疑念は意味を失った。
各企業は綿密な国際コンサルタントを介しており、それぞれが空港運営の当事者である。そのような企業がこれほどの金額で落札したからには、新空港の必要性から議論するのは有意義とは言えないようだ。

最後に、願わくば建設途中で資金問題に行き当たらず、一刻も早く新空港が開港しますように。グッドラック。

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( 翻訳者:原田星来 )
( 記事ID:29865 )