赦しは不要だ、処刑せよ(下)
2014年05月18日付 Jam-e Jam 紙

 ハサン・タルダスト元判事も、司法で扱われるあらゆる犯罪や事件に対して、〔被害者遺族の〕赦しを求めるべきではないと指摘し、ジャーメ・ジャム紙とのインタビューの中で次のように述べている。「重要なのは、一部の犯罪には〔個人的な感情とは別に〕一般的な側面がある、ということだ。赦しは、国民感情を傷つけ、混乱させることにもなりかねない。それゆえ、《赦し》はどんな場合でも良いとは言えない、ということだ」。

 同氏は次のように続ける。

ときに罪を犯した者が、償いをしたいと考えるような場合がある。そのような場合、もし〔犯罪への〕赦しが行われれば、それは倫理的な観点から良いことだと言えるし、神もそれを喜ぶだろう。しかし一部の事件では、赦しはキバをむくヒョウに憐れみの情を見せることを意味し、それは社会に負の影響をもたらす。それは社会に寄与せず、刑罰の存在意義にとっても良くないことである。例えば、故意に犯された殺人などがそうである。

 もちろん、こうした事件を絶対視することはできない。というのも、状況や動機は、犯罪者ごとに同一でないからである。

 タルダスト元判事はさらに、社会感情を傷つけた犯罪者も赦されるべきだ〔一部の人が〕強く求めていることについて、次のように論じている。

 
一部の犯罪は、国民感情を動揺させてしまう。こうした犯罪では、赦しは正しいこととは言えない。しかし万が一〔被害者遺族によって〕赦しが行われてしまった場合、原告側の検事はこの件を見過ごすべきではない。なぜなら、社会は法律と刑罰によって管理されているからだ。もし刑罰がその存在意義を失ってしまったら、もはや自らの法的影響力を保つことはできないだろう。

 犯罪のなかには、犯罪者たちによって常習的に犯されているものもある。例えばタルダスト元裁判官は、サアーダトアーバード事件や事前の計画によって複数の人物によって起こされた組織犯罪について言及している。同氏によると、こうしたケースでは「赦し」は適切なものとは言えないのである。

白装束で刑執行

 被害者遺族の立場に自らの身を全身全霊で置かないのであれば、「赦し」を口にすることは簡単だろう。というのも、愛する人が何の過失もなく犯罪の犠牲者となってしまった家族は、自らの権利を求めるものだからだ。

 テヘラン刑事検察庁殺人特別第3課の予審判事は、次のように指摘する。

被害者遺族の中には、キサースによってのみ、心が平穏になる人たちがいる。私たちが扱った事件の中には、殺人犯がある男の子を〔性的に〕暴行した上で、殺害したといったケースがあった。遺族は刑執行時に、全員白装束を着ていた。彼らは刑執行後歓喜し、安堵感を感じていた。

10億トマーンで「赦し」


 残念ながら、しばしばこうした事件は社会的弱者層で起きているため、被害者遺族は〔加害者へのキサース免除の〕同意のために、賠償金を要求することが多い。そして犯罪者が社会に復帰するようなことになれば、再び罪を犯すかもしれないということには、まったく注意を払わないのである。

 予審判事のジャムシーディー氏は、次のように続ける。

被害者遺族の中には私たちに意見を求め、もし犯罪者が釈放されたら、社会に危険はないのかと訊いてくる人たちもいる。重要なのは、経済的な問題が大きくなっているため、多くの殺人事件は賠償金で〔加害者をキサースから免除することへの〕同意が得られるようになっている、ということである。我々にとっては釈放に同意できないような殺人犯の多くが、遺族の説得に成功している。我々としても、〔キサースを選ぶか賠償金で解決するかは遺族の判断に任されているので、〕仕方なくキサースとするべき事件を諦めざるを得ないのである。

 法律では、人的被害に対してはディーヤ(殺人賠償金)〔による解決〕が認められており、毎年その額が定められている。しかし重要なのは、法律によれば、被害者遺族はより高額の、あるいは少額のディーヤを受け取ることで、〔加害者へのキサース免除について〕同意するかどうかを決めることができるということである。

 ジャムシーディー判事は被害者遺族が〔加害者へのキサース免除の〕同意に対して、10億トマーンを受けとったケースがあることを指摘している。同氏は「これは91年に捜査が行われた事件で、もちろん殺害犯はプロの犯罪者ではなく、予期せぬ路上での取っ組み合いで、殺人を犯してしまった」と続ける。

 その一方で、被害者遺族の中には一銭も受けとることなく、キサース免除に同意する人たちもいるという。〔‥‥〕



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:8412305 )
( 記事ID:34077 )