アフマディーネジャード、サイード・モルタザヴィー逮捕に猛反発
2013年02月06日付 Mardomsalari 紙

【政治部】サイード・モルタザヴィーの逮捕はあまりに予期せぬ出来事だったため、一部のニュースサイトは当初、それを報じるのをためらったほどだった。しかし月曜日の夜24時を数分過ぎた頃、ファールス通信はテヘラン検察によってモルタザヴィーが逮捕されたことを明らかにし、原理派系の同サイトによるこの報道をきっかけとして、その他の通信各社も、モルタザヴィー逮捕の詳細を一斉に伝えた。

 サイード・モルタザヴィーはこうしてエヴィーン刑務所に送られ、一大政治ニュースへと早変わりしたわけだが、その逮捕理由については曖昧さが残っている。

 社会保障庁長官代行のサイード・モルタザヴィーの逮捕について、ファールス通信はある情報筋から得た情報として、彼が社会保障庁長官時代に不法に政府の資産を占有したことが原因であると報じている。これより前、行政公正院や国会監督局、および一部の議員らは、モルタザヴィーが社会保障庁のトップの地位に就いていることは違法であり、司法によって追及される可能性もあると指摘していた。

 なお、モルタザヴィーは「キャフリーザク事件」で、その他の仲間たちとともに〔司法関係者として〕停職処分を受け、今もこの事件の捜査・裁判は終わっていない。

 こうして、かつてテヘラン検事として辣腕を振るったモルタザヴィー判事は、今回テヘラン検察によってエヴィーン刑務所に送られたのである。

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 しかし問題はこれで終わりではなかった。エジプト訪問のためにテヘランを出る直前にマフムード・アフマディーネジャード大統領が発した発言が、新たな波紋を呼んでいるからだ。実際、大統領の発言は多くの通信社やニュースサイトでトップニュースとして報じられている。

 アフマディーネジャード大統領は昨朝、イスラーム諸国会議機構(OIC)首脳会議に出席するためにカイロに向けてテヘランを発つ直前、記者団に対し「司法権は国民のものであるべきであって、ある一家に属した特別な機関であるべきではない」と述べた。

 アーリヤー通信の報道によると、大統領は「モルタザヴィー逮捕の報は遺憾であり、どうしてこんなことになったのか理解できない。なぜなら、違法行為を犯した人物とは別の人物が逮捕されているからだ」と述べた上で、「司法権は国民の司法であるべきだ。なぜなら、ある一家に属した特別な機関ではないからだ」と語った。

 大統領はサイード・モルタザヴィー社会保障庁長官代行の逮捕について、「ある人物が違法行為を犯し、別の人物がそれを知り、その違法行為を公表した。ところが違法行為を犯した人物を追及するのではなく、違法行為を公表した人物が取り締まりに遭っている。これは極めて醜悪なことだ。イスラーム共和国の国民にとっても、司法権にとっても相応しいことではない」と指摘、その上で「外遊から戻ったら、必ずこの問題を厳しく追及する」と強調した。

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訳注:この記事の背景は以下の通り。

アフマディーネジャード政権は2012年3月に、サイード・モルタザヴィーという人物を協同労働社会福祉省(以下労働省)管轄の「社会保障基金」(現社会保障庁)の理事長に任命した。

サイード・モルタザヴィーは1990年代に司法権の裁判官として数多くのプレスを発行禁止に追い込んだことで有名で、その後テヘラン検事に就任、2003年にイラン系カナダ人ジャーナリストのエヴィーン刑務所での「拷問死」に関わったともされる人物。2009年大統領選挙後の騒擾で、テヘラン検事だった同氏は、騒擾に加わった一部の人物をテヘラン南部にある「キャフリーザク拘置所」に拘束の上、数名を殺害した疑いがもたれ、その結果、司法関係者としての資格を停止された。

そのような人物が公職に復帰することを快く思わなかった国会は、モルタザヴィーの社会保障基金理事長就任に反発、管轄の労働相の弾劾・罷免が取り沙汰されるようになるが、モルタザヴィーの辞職見通しが発表されたことを受けて、弾劾案は取り下げられた

ところが政府はその後も、モルタザヴィーを社会保障庁(社会保障基金)のトップにとどめ続ける姿勢を示したことから、国会は今年1月下旬に労働相の弾劾をついに決定、2月3日に弾劾裁判が行われ、圧倒的賛成多数で同相は罷免された。

こうしたなか、同相を弁護するためにこの弾劾裁判に出席していたアフマディーネジャードは、国会での演説の際、アリー・ラーリージャーニー国会議長の弟であるファーゼル・ラーリージャーニーがモルタザヴィーと秘密会談をし、そこでファーゼルが、家族コネクションを利用して、兄のアリー・ラーリージャーニー国会議長、及びサーデグ・アーモリー=ラーリージャーニー司法権長官に、モルタザヴィーの社会保障庁長官職について取りなしをすることの見返りとして、同庁に関連するビジネス上の便宜をモルタザヴィーに要求している様子を映した、隠し撮りのビデオ・テープを放送(音声ははっきりせず、本当にそのような会話が行われていたのかは不明)、ラーリージャーニー家による腐敗を告発した。これに対しラーリージャーニー国会議長も国会の場で、アフマディーネジャード大統領の行為を「大統領に相応しくない」として強い口調で非難した。

サイード・モルタザヴィーは司法によって翌日逮捕され、これに対してアフマディーネジャードがモルタザヴィー逮捕は司法を私物化するラーリージャーニー家の横暴であり、本来逮捕すべきはファーゼル・ラーリージャーニーの方だと反発した、というのがこの記事の内容である。

なお、モルタザヴィーはこの翌日に釈放されている。サーデグ・アーモリー=ラーリージャーニー司法権長官がこの直前にハーメネイー最高指導者と緊急会談を行い、そのことがモルタザヴィー釈放につながったとも噂されている。

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( 翻訳者:ペルシア語記事翻訳班 )
( 記事ID:29159 )